書籍案内
持続可能な未来のためにII-北海道から再生可能エネルギーの明日を考える
2012年に北大大学院共通講義・市民公開講座として行われた「持続可能な低炭素社会」の講義を元に,持続可能な低炭素社会づくりについて様々な観点から論じたものである。
第Ⅰ部では,わが国と世界が直面する地球温暖化問題の現状と,その対応のため,どのような国際交渉と国内での対応が行われているかを概説する。第1章では,1992年の地球サミットから2012年の国連持続可能な開発会議に至るまでの地球環境問題について,日本の関与などについて概説し,「グリーン経済」など今後の方向や北海道との関わりなどを解説する。第2章では,温室効果ガスの削減について,科学的観点,あるいは現在の国際交渉からはどのようなことが求められているのか,わが国の目標の策定はどのように取り組まれているのかを解説する。第3章では,温暖化防止の手段の一つとして検討されている海洋肥沃化の問題について,国際法の観点から検討する。
第Ⅱ部では,持続可能な社会づくりの一つの鍵となる各種の再生可能エネルギーについて,その概要と現状,今後の展望について特に北海道における可能性に着目して,最新の動向を踏まえた論考を収録する。第4章では,言わば総論として,現在北海道の各地で行われている再生可能エネルギー活用の取り組みの事例と,わが国の脱原発と再生可能エネルギーの利用拡大への展望について,デンマークやドイツとの比較を交えて解説する。第5章では,北海道を例として今日のエネルギーの抱える問題点と,これを克服して新たな社会を構築するための方向を論じる。第6章では,地熱エネルギーについて,特性・今日の状況・課題とその実相を学術的観点から解説し,今後の展開の可能性を論じる。第7章では,再生可能エネルギーである家畜糞尿バイオマスについて,現状と課題,北海道を中心とした事例と今後の展望について解説する。第8章では,電力供給の持つ特性,再生可能エネルギーを大幅に導入するための課題と,それを解決するための手段である「スマートグリッド」とは何か,その方向性について解説する。第9章では,固定価格買取制度(FIT)について,わが国のエネルギー供給や再生可能エネルギーの特徴から説き起こし,FIT制度のしくみと現状について解説する。