院長挨拶

「場」の重要性

空井 護

公共政策大学院 院長
空井 護
Mamoru SORAI

北海道大学公共政策大学院(Hokkaido University Public Policy School[HOPS(ホップス)])は,「公共政策及び公共サービスに関する企画,立案,実施,評価等を担う専門家及び職業人」の養成を目的に掲げる専門職大学院です。2021年4月1日現在,学校教育法99条2項に定める専門職大学院のうち,公共政策分野のそれは6校ありますが,ただ1校,本州の外に置かれているのがこのHOPSです。

今日,解決を求められる公共政策課題は,地域によってその様相を大きく異にします。日本の人口の3割が集中し,いまだに転入者数が転出者数を上回る東京圏,それに両者が拮抗する名古屋圏と大阪圏とを合わせた,いわゆる「三大都市圏」と,転出超過が続くそれ以外の「地方圏」とでは,公共政策対応を迫られる問題の顔ぶれやその間の優先順位は,当然ながら異なります。そして,居住者の密度や年齢構成や就業構造の違いなどに起因する公共政策課題の斑(まだら)状況は,地方圏の内部において,中核都市とそれ以外の地域とのあいだで,ときに斑模様を一層鮮明にするかたちで再現されています(これは日本に限った話ではなく,世界のあらゆる国で生じ,同時に地球規模でも生起している現象です)。

専門職大学院は,事例研究や現地調査を授業の柱のひとつに据えています。そうした実践的で,「職業訓練」的ともいえる授業において,具体的な公共政策課題を我がこととして受け止め,グループワークの遂行やリサーチペーパーの執筆を通じて真剣にその解決策を模索するなかで,高度専門職業人に必要な能力と知識を身につけてゆく。このような大志を抱かれた方々にとって,HOPSはその立地からして,すでに十分に魅力的な存在ではないでしょうか。

HOPSで学ばれるとき,一極集中を進めつつも人口の減少と高齢化を免れない地方中核都市・札幌市とともに,「過疎」や「空洞化」に直面しながらも独自のプランで再生・発展を試みる,幾多の革新的で挑戦的な道内コミュニティが,ごく身近な存在として意識されるはずです。

公共政策課題のリアリティや切実性は,政策現場とのあいだの物理的距離に大きく規定されます。遠い異国での非人道的な処遇を本当に自分自身のことと感じられるのは,人並み以上に豊かな共感力の持ち主であるというのが,悲しいかな現実です。対象との心理的距離感が物理的距離に比例してしまう。これが平均的な人間の性(さが)というものでしょう。

公共政策課題をリアルで切実なものと受け止めること。これは,優れた公共政策学的探求の大前提です。そしてHOPSからは,現代の日本に突き付けられているほぼすべての公共政策課題が,すぐそこに看て取れます。やや穏当さに欠ける表現かもしれませんが,北海道は公共政策課題の「デパート」です。しかも,いかに北海道が広大とはいえ,道内のほとんどの地域は,札幌からその日のうちに赴くことができます。目を凝らし,耳を澄ませ,足で確かめるべき「現場」は,はるか彼方の縁遠い場所では決してありません。

開設から16年。これからもHOPSは自らが置かれた「場」の特性を常に意識し,最大限それを活かしながら,公共政策・公共サービスに携わる高度専門職業人の養成に努めて参ります。

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