学生の提言活動
2022 年度 政策討議演習 (余市班)
活動報告
余市町担当班は、地域防災力向上のための広域連携をテーマとして政策分析、提言を行いました。2022年3月に、後志管内の余市町、仁木町、古平町、積丹町、赤井川村の5町村が、サツドラホールディングス株式会社、生活協同組合コープさっぽろ、ベル・データ株式会社と連携し、北後志広域防災連携協定を結びました。学生たちはこの広域連携の取り組みを研究対象として取り上げ、財政的、人的資源に制約がある地方自治体が地域防災力の向上を図るためのモデルケースとして、どのような連携のあり方が実効性を高めるために必要となるか、多角的に検討しました。
連携自治体5町村を手分けして訪問し、防災拠点施設を実地に調査し、それぞれの地域における防災担当者から防災体制の現状と課題意識について聞き取りを行い、北後志地域全体の課題構造の中に個別事情を位置付けて理解するよう努めました。その結果、人口減少と高齢化の進展という共通課題に加え、災害発生時の被災内容には相当な差があること、この点と関わって、行政の防災に向けた取り組みにも優先順位付けに差があることなどがわかってきました。民間事業者からも防災の実効性を高めるためのノウハウや技術の実装化、それらを踏まえた地域の将来像に関するビジョンも含めて調査聞き取りを行い、民間の力と自治体の政策をどのように組み合わせることが地域課題の解決につながるか、考えました。加えて、同じ北海道内で大きな自然災害に見舞われ、復興の取り組みを続けている厚真町、災害対応DXの先進地である室蘭市、広域防災行政の先行事例である関西広域連合等の取り組みからもヒントを得ました。
学生たち自身の調査を踏まえ、北後志広域防災連携協定の課題を、災害マネジメント、避難所運営、支援物資に係る業務、その他の4つに分類して整理し、それぞれの分野について、情報共有、プラットフォームの構築、共同計画の作成、住民参画という4つの切り口で提言を行いました。加えて、連携協定関係者間での認識の共有を一層進める必要があること、現状の連携範囲にとどまらずさらに連携の輪を広げることが防災力の向上につながると結論づけました。北海道に限らず全国的に少子高齢化が今後も一層進むことが予想される中で、自治体間の連携による課題解決は一層求められる時代が来ます。その点で今回の研究は示唆が多いものであり、学生たちの今後の研究や職業上での取り組みの発展につながるものと考えられます。
(担当教員:田中謙一、武藤俊雄)
2022 年度 政策討議演習 (栗山班)
活動報告
栗山町のハサンベツ里山では、20年ほど前から、地域住民のボランティアによって里山の自然環境保全の活動が行われてきました。しかし、現在、保全活動を継続する上で、活動を担うボランティアの高齢化、担い手・協力者の不足などの課題に直面しています。栗山町担当班では、栗山町役場からこれらの課題について提示を受けて、政策分析、提言を行いました。
栗山町を訪問し、実際にハサンベツ里山でのボランティア活動に参加するとともに、栗山町役場職員にインタビュー調査を行い、班員のブレーンストーミングにより、①行政と町民の意識の隔絶感、②誰が保全するか、関係者間の活動への意識の差、③組織や人、情報の連携不足といった課題があるとの仮説設定を行いました。
その後、ハサンベツ里山計画実行委員会、自然教育を行うNPO法人などにインタビュー調査を行うともに、栗山町民や学生に対するアンケート調査を実施しました。また、NPO法人キウシト湿原・登別など先進地視察もあわせて行いました。
その結果、①関係者間での定期的な協議の場を設け、里山のルールづくりを行うなどの組織と体制の土台固めを行うこと、②ハサンベツ里山のファンを増やす認知度向上の取組を行うなどの提言を行い、あわせて実現のためのロードマップを整理して提示しました。日本全国で、地域の活動の担い手の確保が課題となっている中で、今回の提言は他の自治体でも参考となる意義のある内容となりました。
提言作成後、栗山班員が栗山町長と教育長に対してプレゼンを行い、率直な意見交換を行いました。今回の授業を通じて、仮説設定、現地でのインタビュー調査やアンケート調査、先進地視察を行った上で、班員間での議論を踏まえた政策提言を行うことができ、社会人学生にとっても、これから就職を目指す学生にとっても、自治体の地域独自の政策課題に現場で真剣に向き合う貴重な経験となりました。
(担当教員:中尾文子、山本直樹)
2021 年度 政策討議演習 (余市班)
活動報告
公共政策大学院と余市町は、2021年3月に包括連携協定を締結しています。
余市町においては、現在、ワイン用ぶどう栽培農家は50軒近く、ワイナリーも15軒を数え、全国でも有数のワイン産地となっています。ワイン産業を活用した余市町の活性化をテーマに学生たちは検討を開始しました。
まず、余市町の複数のワイナリーを訪問して取材するとともに、北海道内外のワイン産地の振興策について、文献や地方自治体への書面取材等により調査し、参考となる先進事例の整理を行いました。
さらに、余市町では、ワイン産業以外に果樹・漁業も盛んであることや、観光振興に課題を抱えていることに着目し、果樹農家・農協・漁協・観光協会・商工会議所・青年会議所・宿泊業者・飲食業者・酒販店・地域交流団体などにも取材を行い、余市町の豊かな資源をフルに活用した地域活性化策を検討することにしました。
こうした地道な現地調査の結果を踏まえ、学生より、『「食と酒のまち余市」に向けて―地域連携プラットフォームの提案―』と題して、余市町への政策提言をまとめました。提言では、ワイン産業の振興に加え、地域の産業を構成する様々な団体・事業者が地域活性化のアイディアを出し合うプラットフォーム(交流の場)を設けることや、アイディアの実現に向けたプラットフォームの具体的な運営方法や行政の支援のあり方などについてまとめました。提言の作成にあたっては、取材を行った団体・事業者に案を提示してさらに意見を求めたり、同様の仕組みを設けた他の地方自治体にオンラインでインタビューするなど、より実現性の高い内容となることに努めました。
提言をまとめた後、余市町役場との共催で地域住民向けの説明会をオンラインで開催するとともに、齊藤啓輔町長に面会し、役場職員の方々も交え率直な意見交換を実施しました。のべ十数回にわたる現地取材による現状と課題の把握、先行事例の調査・分析、町長や地域住民へのプレゼンテーションなど、学生にとって貴重な経験となりました。
(担当教員:中園和貴、中尾文子)
2021 年度 政策討議演習 (芽室班)
活動報告
芽室町議会は、2013年に議会基本条例を制定し、これまで、住民参画、情報共有などに関して様々な取組を行ってきました。芽室町の議会改革は全国から注目されており、高い評価を受けています。一方で、近年、議員選挙の投票率が低下するなど、芽室町民の議会・議員への関心・期待は必ずしも高いものとはいえない状況にあります。そのため、芽室班では、町民が理解しやすい議会活動に対する評価方法はどのようなものかをテーマとして、検討することとなりました。
芽室町を訪問し、議員だけでなく、芽室町の中高生、子育て世代、NPO活動に従事している方など、様々な町民に対してインタビューを行うとともに、先行事例として、情報発信に取り組む登別市議会や、若者の意見を取り入れる少年議会に取り組む山形県遊佐町議会を訪問し、調査しました。
芽室班では、これらの調査で得られたデータに加えて、市民参加やプロジェクト評価に関する理論などを活用して、検討を進めました。その結果、議会の役割について町民の理解が不足している、議会活動に関わる情報が効果的に町民に提供されていないなどの課題を踏まえて、評価手法だけでなく、成果を明示した上で必要となる活動を提示し、議会活動による町民の変化を指標として評価する、一連の具体的なプロジェクトを提言しました。提言の中には、議会のトリセツの作成、少年議会の開催、議員単位のホームページの開設など、具体的な活動例も盛り込みました。
提言作成後、芽室班員が町名産のピーナツのオリジナルTシャツを着て、芽室町議員全員に対してプレゼンを行い、率直な意見交換を行いました。現地でのインタビュー調査、先行事例の訪問調査、班員間での徹底した議論、学術的な理論を活用した分析に基づく取りまとめなど、理論と実践の双方を重視した授業を実現することができ、班員にとって貴重な経験となりました。
(担当教員:山本直樹、武藤俊雄)
2021 年度 公共経営特論Ⅲ
活動報告
2050年カーボンニュートラルの達成への関心が高まる中、時宜を得た形で環境・エネルギー政策について学び、その上で学生が政策提言を行いました。
まず、北海道のエネルギー事情、原子力発電の必要性と課題、再生可能エネルギー、今後のエネルギー企業経営について、北海道電力株式会社の講義と、エネルギー政策の動向と今後の方向性について、資源エネルギー庁の講義を受講し、北海道ガス株式会社のアレンジメントによる関連施設見学を行いました。さらに、北海道電力株式会社、北海道ガス株式会社、環境省北海道地方環境事務所、HOPS教員による学内公開セミナー「カーボンニュートラルとその先に描く北海道の暮らし」を通じ、カーボンニュートラルに向けた政策と技術の現状と課題について理解を深めました。
その上で、「脱炭素を目指す中での欧米電力供給事業体の動向を踏まえた政策」、「再生可能エネルギーを補完する技術開発の動向と促進政策」、「北海道民にとって公平感のある再生可能エネルギー導入政策」の3グループに分かれて政策を立案しました。成果発表では北海道電力株式会社幹部にも講評をいただいて、北海道の強み・弱みとステークホルダーの思考様式を踏まえた実現可能性ある環境・エネルギー政策を議論することの重要性を学びました。北海道電力株式会社をはじめ、本講義にご協力いただいた皆様に改めて感謝申し上げます。
(担当教員:中尾文子、村上裕一)
2021 年度 環境政策事例研究
活動報告
まず資源循環及び自然との共生に関する身近かつ代表的な課題、具体的にはプラスチック、さっぽろのごみ処理事情と新計画、エゾシカ対策について受講し、野幌森林公園でヒグマ出没対策について実際に現地を見ながら学びました。さらにさまざまな環境問題を統合的に解決する視点について、再生可能エネルギーの推進と生物多様性保全の両立、サステナブルファイナンス(ESG金融)、岩見沢市における地域循環共生圏、原発事故による環境汚染からの福島の復興・再生を受講し、理解を深めました。
講義は各テーマについて外部専門家による講演を受講した上で、学生からの政策立案の発表と議論を行い、最終的に議論も踏まえ練り上げた政策立案レポートの作成を行いました。現代の環境問題の解決には、社会や経済のあり方、個人の価値観の変容が求められており、政策でそれをどのように訴求するのかが重要であることについて理解を深めました。
ご講演をいただいた北海道環境財団、札幌市、北海道、環境省、三井住友信託銀行、株式会社日立制作所の皆様に改めて感謝申し上げます。
(担当教員:中尾文子)
2020 年度 公共経営特論Ⅲ・環境政策事例研究
活動報告
第二学期において、公共経営特論Ⅲとして北海道電力様及び北海道経済産業局様のご協力により、北海道のエネルギー供給、特に電力供給の諸課題について学んだ。
電力の特性から常に需給を同量になるようにバランスをとることを制約条件としながら、3E+S、すなわち安全確保を前提としつつ、エネルギーの安定供給、経済性、環境適合性という互いに相反する側面のある目標を目指した取り組みについての知見を学ぶことができた。特に、2011年以来の原子力発電規制強化、2018年の北海道ブラックアウト、2020年の送電事業の法的分離に至る電力自由化、さらには2050年カーボンニュートラルと新たな課題が次々に現れる中で、公益と深く関わる企業活動の在り方について学んだ。
さらに、環境政策事例研究と合同の取り組みとして、北海道ガス様のご協力もいただいて、巨大なガスタンクから個人宅への配電や熱供給までエネルギー供給の現場の施設見学も行うことが出来た。
授業の後半には、学生のグループワーク・プレゼンテーションの機会を設け、ご協力いただいた企業の方々からも貴重なコメントをいただいた。様々な技術や環境影響と政策の交点である文理融合の分野であるとともに、外交と地域の取組が深く結びつくグローカルな課題の現場について学ぶことが出来た。
2019 年度 政策討議演習 (石狩班)
活動報告
「市民ひとり一スポーツ」というスポーツによるまちづくりの目標を掲げている石狩市では、市民の健康寿命の延伸を目指し「石狩市健康づくり計画」を通じて様々な機会を市民に提供しています。例えば、定期的に開催するカローリング大会やウオーキングイベントなどがあります。
そんな石狩市のスポーツ・健康づくり政策における課題は、施策利用者がやや高齢者に偏っており現役世代に十分に効果が届けられていない可能性があることと、スポーツ振興や健康づくりを支える官民の団体や施設といった地域資源の連携・相互作用が不十分な状態にあるとみられる点でした。そこで研究グループでは、石狩市内の小中学校生や石狩市民を対象としたスポーツ習慣に関するアンケート調査を実施するとともに、地域資源の連携で先行事例とみられるケースを取材するために東京都大田区と山口県宇部市のスポーツコミッションを訪問取材しました。
これら調査で得られたデータと地域情報を分析し、地域資源の統合活用を目指す組織体「いしかりヘルスポ」の設置を政策提言としてとりまとめました。政策提言は石狩市現地に出向いて官民双方の関係者にプレゼンを行い、地域の将来ビジョンについて率直な意見交換を行う機会をいただくことができました。
2019 年度 政策討議演習 (喜茂別班)
活動報告
今後、北海道新幹線の延伸、高速道路整備、冬季五輪の誘致、インバウンド需要の高まりなどにより、道内の人の流れや観光について大きな変革期を迎えていくことを背景に、中山峠に象徴される「通過型」の街であった喜茂別町を如何にして「滞在型」の街にしていくのかについて、議論していきました。
喜茂別町が日本での栽培発祥の地であるホワイトアスパラガスの収穫などの農作業体験や食の体験、渓流釣りなどの喜茂別の自然の魅力を活かした体験やそれらの組み合わせや、ようてい・西いぶりエリアの観光資源等も活用して、喜茂別町を宿泊の地として滞在する者を増やし、関係人口の増加に結びつけようという政策提言をとりまとめました。
現地での行政や諸団体等関係者へのヒアリングなどで、喜茂別町の方々からも直接様々な意見をお聞きすることもでき、公共政策を考えていく上で、貴重な機会となりました。
2017 年度 政策討議演習 (夕張班)
活動報告
財政破綻から10年が経過し、「まちの再生」に取り組み始めた夕張市をフィールドに、「若者の移住・定住促進策」について、政策提言を行いました。
具体的には、まずは現場を知るため、2回の現地訪問を実施し、施設の視察や農協、地域づくり団体へのヒアリングを行いました。さらに、他地域の先進事例を調査するため、道内2か所の自治体及び北海道庁で、政策担当者へのヒアリングを実施しました。これらを踏まえ、毎週の白熱した議論により、提案を磨き上げていきました。最終的に、新規就農による移住者確保と子育て支援の充実という2つの大きな柱に施策をとりまとめ、市役所の担当課長に直接提言内容を発表しました。
夕張市は財政破綻により財源に厳しい制約があることから、新規政策を考えるに当たっては、財源額保策をセットで考える必要があり、より現実に即した政策立案を経験する貴重な機会となりました。
2017 年度 政策討議演習 (ニセコ班)
活動報告
スキーリゾートとして知られ近年のインバウンド消費も増加しているニセコ町において、その恩恵を十分に受けていない中心市街地の再活性化策を、中心市街地にある3つの公共施設の利活用の観点から検討・提案しました。
検討にあたっては、地域経済システム(RESAS)の統計データ等による現状分析を行うとともに、6月にはニセコ町の各施設の現地調査を、11月には2回の関係者へのヒアリング調査を行いました。現地調査・ヒアリングや、1月の現地報告会での意見交換は、ニセコ町の現地で様々な課題や活動に関わる方々から、生の声を聞いて考える貴重な機会となりました。
2017 年度 政策討議演習 (喜茂別班)
活動報告
政策討議演習喜茂別班は、喜茂別町における福祉人材確保・育成方策について検討を行いました。喜茂別町は、札幌市の南隣に位置する町ですが、人口が減少する中、町の全人口に占める高齢者人口(65歳以上)の割合は、今後とも40%弱の水準で推移することが予測されています。このような状況の中で、高齢者介護等を担う福祉人材の確保・育成が大きな課題となっています。
喜茂別班では、喜茂別町においてアンケート調査を行うとともに、福祉人材確保について先進的な取り組みをしている社会福祉法人の方に話を聞いたり、文献調査を行ったりすること等によって、喜茂別町における福祉人材確保・育成方策に関する政策提言をとりまとめました。今回の演習は、人口減少社会における福祉人材確保・育成という大きなテーマについて考える良い機会となりました。